手帳にあったやつその2

この手があなたに触れるとき
世界はなぜか歩みを速め
誰かがあなたの唇を求めるのです
磁石が引き合うことが
歯車が噛み合うことが
真理であり奇蹟であるように
神の声のように
苦痛と運命と
いいわけを受け入れて
ひととき全てを忘れるのです
いずれ世界の網にからめとられ
冷えて固まっていくことを
私達は知っていて
いま私たちは走るのです
なぜか歩みを速め
できないと知りつつも
世界に追いつこうとして
目を閉じたまま走るのです
唇の触れるさま まるで音楽のように
私の中に流れ込んでくる
流れ舞うさま 心臓に寄り添い
目を閉じたままいたいと願うのです
いまを微分し永遠とし
橙色の光の中
目を閉じたままいたいと願うのです