アンチ道程

高村光太郎の詩集を買ってきた。当然、有名な道程の詩も入っているのだが、あまりにも能天気に見えてむかつく。
というわけでパロディにしてみよう。

僕の前に道は無い
僕の後にも道は無い
右手には壁 左手にも壁
あるいはこっちが前だったか 後ろだったか
湿田のごとき泥の海に腰まではまり
太陽も北極星も無しに前後左右の分別が付くものか
左右の壁が石の壁なら叩き壊してくれようず
さわりたくもない 糞の壁じゃ
この臭い泥海に 男子の夢が何ぞある
星座の無い夜空の下で
誰が宝の地図を読み解く

ああ、自然よ
貴様等は時計の針と暦と謀って
僕の眼前を飛び過ぎる
どんな言葉も追い付かぬ
美しいのは失われたもの
新しいものは凡庸に堕す
昨日と同じ靴で朝露を踏む

父よ
丈夫な肝臓をありがとう
最近はウィスキーを半分も空けねば調子が出ない

おまえらの道程とやら 散歩気分で楽しそうだな
うららかに陽が射しているのだろう
隣を歩く者もいるのだろう
僕は目を閉じ この小さな小宇宙に充足するぞ

僕を一人立ちにさせない姿無き亡霊どもよ
もう僕から目を離し構うのを止めてくれ
僕はすでに実り無き妄想に満たされている

僕は何一つ成さぬ
僕は何一つ果たさぬ

この暗き道程のため
この暗き道程のため

まあ、ほんとはここまで世をすねているわけではないけどね。
智恵子Showという駄洒落も思い付いたんだけどあんまり不謹慎になりそうなのでやめた。