現実

テレビに映ることは現実じゃないと
モニターの向こうは現実じゃないと
だからニュースは現実じゃないと
だからネットも現実じゃないと
主張してみても
向こう側にも人はいて
何かを思い何かを作って
そこにあるのは要するに
届かない断線

ドアの外こそ現実だと
直射日光の下に出てみても
バスの運賃箱に消える硬貨は
母の汗の匂いがするようで

ポップンミュージックのボタンを叩き
つかのま衝撃が音に変わる感覚に酔う
それでも僕の音楽も詩も
自己顕示欲を満たす程には轟かず

ハローワークが現実か
そこにあるのもモニターで
面接官の言葉も顔面も
向こう側をただ隠すだけ
何を考え何を欲する
そんなことさえわからない要するに僕は
無知

バスを降りざま、
「ありがとうございました」と言う
女子高生の声を聞き
「おいしいチャーハンの作り方」というページを見て
僕は米を炊き卵を割る

でも今日はカレー食った。