通学
「吹きだまりに落ちたら春まで見つからないぞ」 道ばたに先端を赤く塗った細い木の棒が立てられている 時計は持っていなかったように思う 学校のチャイムを目指して歩く 寒さを外側に残して意識は縮む 体の芯が冷たくなることはない スキーウェアのズボンをはき足の裏にスパイクのついた長靴をはき 毛糸の帽子をかぶり、外につながる隙間ばかりを気にしていた よく覚えていないのだ、雪の中を歩いたときのことは ただ、ほとんど白い視界は充ちていたように思う 吹雪の中には影が無くて 僕らだけが小さな色の点か 寒さに耐えるには口を閉じていること でも奇妙に昂揚して 話したり歌ったりしたくなる 誰もいないけど、いや、いないから あるいは妹が後ろを歩いていただろうか 足音は端的に生存を伝える 自分の分も 暖かい建物の中に入り、初めて雪の匂いを嗅ぐ